エレクトーンコンサート
2025.3.2
Photo by 田中大造
今年、創業200周年を迎えた三木楽器が贈る、エレクトーンスペシャルコンサート「HITPARADE」第4弾! レジェンドたちが自身のヒットソングを携え集結した。オープニングは、高田和泉と倉沢大樹のデュオによる豪華ビッグバンドサウンドの〈A列車で行こう〉。スピード感溢れる4ビートに、高田と倉沢のサックスとブラスが交錯し、ゴージャスなステージの幕開けだ。観客の期待も大きく膨らんでいく。
ソロで最初に登場したのは中野正英。エレクトリックからシンフォニックまでサウンドを自在に操る中野の1曲目は、配信シングルや曲集で人気の〈アドバーシティ〉。キャッチーなメロディーにデジタルロックのテイストも入ったポップなナンバーで、観客を中野の音世界へと誘っていく。続く2曲目は〈ユー・レイズ・ミー・アップ〉。ピアノのイントロから静かに始まり、清らかなメロディーにシティポップやモダンゴスペルのテイストも取り入れたクールかつ情熱的なアレンジ。転調でさらなる高揚感に包まれ、そのモダンかつ崇高なサウンドが観客を魅了した。
再び倉沢が登場。妖艶なピアノのイントロから、ラテンテイストのジャズコンボ〈キャラバン〉は、2016年の「HIT PARADE」で披露された人気曲の再演だ。速いテンポでの管楽器のテーマ部分に続いて、サックス、トランペット、ピアノ、ドラムとめくるめくアドリブで一気になだれ込み、迫力の演奏が繰り広げられる。次に倉沢が選曲したのは、ジャズスタンダードナンバー〈チェロキー〉。敬愛するジョーイ・デフランセスコへのトリビュートと語り、ジャズオルガンサウンドを基に、ジャズワルツと4ビートが組み合わさったスタイリッシュなアレンジだ。オルガンコンボの醍醐味を存分に堪能した。
そして「音の魔術師」と倉沢に呼び込まれたのは、鷹野雅史とSTAGEAフィルハーモニー。ピアノの名曲をオーケストラサウンドにアレンジした〈英雄ポロネーズ〉で始まる。鷹野曰く「実はショパンは夢ではオーケストラで作曲したのではないか?」という想像が、音で証明されたかのような完全再現。2曲目は〈ラストエンペラーテーマ〉。中国の二胡や琴の音色をフィーチャーし、オーケストラと奏でられるサウンドは、まるで朝廷に現れる最後の皇帝の目の前で人々がひざまずく壮大な映画のシーンが音で想起され、会場全体が荘厳な世界へと彩られた。
鷹野から紹介され、高田和泉が登場。2人で、2018年の「Duo the Best」でも好評を博した〈Birth〉を再演。命の尊さや愛の気持ちを込めて書いたという高田の曲に鷹野のオーケストラアレンジが加わり、プライベートでは子を持つ親でもある2人が紡ぎ出すメロディーの掛け合いは、その尊さや愛情を深く表現していた。
続いて高田のソロ演奏へ。〈Go For It!!〉は一転してポップなナンバー。高田曰く「音楽を届ける尊い瞬間を形にした前向きな曲」ということで、バンド編成によるアップテンポなサウンドに、エレクトリックギターの軽快なメロディーが乗って、とても明るく、ポップでハッピーなメッセージを客席へ送り出す。続いて、多彩な光のスペクトルを表現した〈Spectrum〉では、印象的なギターカッティングから、サックスやエレピ、ブラスなどが次々と重なり、音のスペクトラムが鮮やかに展開されていく。美しいメロディーを通して、高田の織り成す音と光の世界が交錯し、キラキラと会場全体を包んでいった。
そして、ミスターエンターテイナー富岡ヤスヤが登場。冒頭のMCで観客の笑いを取るや否やスタンディングを促し、始まったのは中森明菜の〈TATTOO〉。ブルースやジャズ、エレクトロニカが組み合わさったダンスビートのアレンジで、会場も手拍子で参加し、ボルテージが一気にアップ。盛り上がる空気をそのままに、アン・ルイス〈六本木心中〉へ。往年のJ-Rockナンバーが、ヤスヤらしいアレンジでさらに迫力あるロックサウンドと化している。ヤスヤの歌にエレキギターのソロ、観客とのコール&レスポンスと、大盛り上がりのステージが繰り広げられた。
大トリは窪田宏。直前にヤスヤがエンディングで「着席~ !!」させた観客を前に、「寂しいなぁ、もう一回立とうよ」と謙虚な提案(?)の後、始まったのは〈2025 KUBOTA's BEST〉。窪田の数々の人気曲のメドレーという、「HIT PARADE」シリーズの集大成だ。代表曲〈The Electric Future〉に始まり、〈Camp Beetle〉〈China Junk〉でポップに、そして〈One's Heart〉〈5000 Watt Power〉、ランニングベースも冴える〈Real in‘D’〉と続き、極上バラード〈あいあいがさ(Aiai-gasa)〉、そして〈Vocalize〉から〈Real Spin Kick〉、スピード感MAXの〈Road Star〉まで全10曲、全開の窪田ワールドを堪能、観客の興奮も最高潮だ。
エレクトーンスペシャルコンサートならではの幅広いジャンルのステージを体感した観客からのアンコールで、プレイヤー全員がステージへ再登場。トークタイムでは、これまでの「HITPARADE」シリーズでの楽屋裏話に加え、富岡ヤスヤのプロデュースにより、この日の出演者6名がアレンジで参加した曲集『STAGEA アーチスト 5 ~ 3級 Vol.51 Ado Electone Score produced by yaSya』の発売も発表された。
アンコール曲は、高田書き下ろしの新曲〈春爛漫〉。ピアノ、ギター、アコーディオン、バイオリンやオカリナの音色が、春の芽吹く緑や咲き誇る花を彷彿させるノスタルジックなナンバーで、爛漫の春を感じてコンサートの幕を閉じた。終演後、数々のヒット曲を満喫し、興奮冷めやらぬ様子で感想を語り合いながら会場を後にする観客の姿が印象的だった。
Written by 中川深捺
協力 月刊エレクトーン