エレクトーンコンサート
2007.3.4
4人のトッププレイヤーが作り上げる 感動の時間がそこにある!
コンサートは、演奏者だけが音楽を作り出していくと思ったら、それは間違いだ。会場全体がひとつの宇宙となって、演奏者と観客が空気を作り、音楽はその空気の粒子と敏感に化学反応し、時間の流れとともに作り出されていく。そこに、感動が生まれる。三木楽器が毎年行っている大規模コンサートには、必ず感動が待っているのを観客はよく知っている。だからこそよりよい空気が作られ、素晴らしい化学反応を生む。しかも、この日の出演は今のエレクトーン界のトップに立つ、個性の違う4人のプレイヤーなのだから!
緞帳が下りたステージ、会場が暗くなると拍手が起こる。緞帳が開きまばゆい何本ものスポットライトが倉沢大樹に降りかかり、同時に高速で飛ばすチャーリー・パーカーの「ビリーズ バウンス」! 倉沢は一昨年のブルーノート大阪でこの三木楽器主催のコンサート ・シリーズに初出演したが、厚生年金はこの日が初めて。1000名の観客相手に強烈な先制パンチを浴びせ、2曲目はロマンティックなバラード「That's All」をピアニカで演奏。3曲目、彼にとって特別に思い出深い曲「Night In Tunisia」を、ハイパーなトランペットが歯切れよく爽快に快走するラテンジャズに仕上げた。
熱気がまだ残るなか、2番手の安藤禎央がエレクトーンへ向かう。爆発音、そして4つ打ちのキックとループするリズム。そこを潜行する低音のメロディー。新曲の「キセキ」… 。歌うメロディーと無機質なリズムが対極のバランスを生む。メロディーは次第に輝きを増し、ついに力強く解き放たれた。刺激的な曲のあとは「You Raise Me Up」。波のように繰り返されるメロディーが集約されていく心地よさ。文句なしに楽しい「YES!!」は、安藤が語ったように「音楽で勇気づけられたら…、元気になってほしい」という"気持ち"の 贈り物だ。
目がハートになってしまった観客。そこに黒のタキシードという正装で現れた鷹野雅史が、蝶ネクタイを直す仕草で笑いを誘う。空気が一瞬にして"ホッ"とゆるむ。次の瞬間 、きらびやかなファンファーレが鳴り響き「スーパーマンのマーチ」。会場はすっかり鷹野指揮STAGEAポップスオーケストラ色に染まった。ラテンナンバーの「ティコティコ」では、「え?」というようなアレンジが次々と繰り出され楽しい。もう1曲「パイレーツ・オブ ・カリビアン・メドレー」では、ストーリー性あふれるファンタジックで迫力満点のオーケストラサウンドを満喫。ブラボー!
ここでトリの登場、窪田宏だ。D-DECKに座り1曲目は「The Electric Future」。デビューから彼とともに歩んでいるこの曲は、常に最新サウンドにアレンジされ、いつでも旬の曲。乾いたリズムにオルガンとベースが絡み、ギターのメロディー…。思わず観客からため息がもれる。「3人の演奏を聴いて頑張らなければ、と思った」と語ると、ジャケットを脱ぎ捨て「REAL in'D'」に突入。ピアノのメロディーがスリリングだ。新曲「Funky D Town」は、タイトなキメや分厚いブラスが炸裂するおしゃれでスタイリッシュなナンバー 。集中がとぎれない。最後、今度は靴を脱ぐ。目にもとまらぬキレのいいベースプレイに耳と(前の座席の人は)目を奪われた「Road Star」。このベースを弾けるのは世界でひと り、窪田しかいない!
鳴りやまないアンコールの拍手に応え、倉沢&安藤の初顔合わせで「マシュ・ケ・ナダ 」。鷹野の演奏から窪田へ、そしてふたりで…と自由な「アメイジング・グレイス」を披露し、今年も感動の嵐のなか、4人のガチンコバトルは終幕した。 (文/編集部)(月刊エレクトーンより)
写真/宮本正成