エレクトーンコンサート
2003.3.2
それぞれの愛のカタチをメロディーに込めて…。珠玉のラブ・ソング。
Love Songs-愛の歌。言葉では伝えきれない想いを音楽に託して、7人のプレイヤーがそれぞれのオリジナルのLove Songsを奏でるコンサートである。「ラブ・ソングがテーマ、バラード中心で大丈夫なの?と一抹の不安をもって始まったLove Songsコンサートも好評を得て3回目です」という窪田宏の紹介にもあったが、隔年開催が定着した感もある。シンプルだがそれぞれの曲に沿ったステージ・セットと照明、念入りに調整された音響、気心の知れたスタッフの心もしっかりつながっているようだ。
演奏者は、それぞれの言葉で曲への想いを語りながら演奏していった。最初に登場したのは鮮やかな黄のスーツの高田和泉。温かみのあるピアノの音色によるメロディーはドラマ『ネバーランド』のために書かれたもの。この曲が広い意味のヒューマンなラブ・ソングならば「elegy」はパーソナルな愛を失い、つらかった時期に作られ、心の支えになったという曲。心の振幅を表すように激しく展開する・・・。
窪田宏はループするデジタルなリズムにピアノの音色によるバラードを。窪田の内なるグルーヴがクールなループと絶妙に絡むと温かいものがあふれ出てくるのだ。
愛はいつも温かいばかりではなく、時には心を締め付ける。切ないバラードを演奏したのは尾野カオル。枯れたアルト・サックスの音色が心の空洞をけだるく奏でる。微妙なニュアンスが繊細な尾野のセンス。
三原善隆は、まさに大人のラブ・ソングを包み込むように聴かせる。力を抜いて心地よいメロディーに身をゆだねてみよう。大好きだった人、幸せだったあの時。そこで流した涙の最後の1滴のあとは、また明日へ向けて生きていけるのだ。
後半に入り、安藤禎央が白い衣装で登場する頃には客席には居心地のよい空気が満ちている。この企画に初めて参加する安藤は3曲を演奏。最後の「Another Century」には、「未来への希望を込めて、まだ会ったことのない遠くで頑張っている人へ。世界中に、平和への第一歩を」とのメッセージが込められ、管弦楽の音色が心の底に響くようだった。
続く渡辺睦樹は、ドイツ留学時の最初の夏休み、ノルウェーのフィヨルドのその壮大な眺めをたったひとりで見たときに襲った言いようのない寂寞感、孤独感・・・。その時にふと浮かんだメロディーが「間想曲」となったのだというエピソードを語った。普段は気にとめることもない、だからこそ深い身近な愛へのオマージュ・・・。
最後は中村幸代の演奏。彼女ほど自然と人々への愛がその音楽と結びついている人はいないだろう。例えば、ミクロネシアで多くの友人と過ごした時間、見上げた青空、そういったすべてが音楽へと昇華してゆき、私たちはその音楽で癒される。東儀秀樹のツアーで知り合ったチェロ奏者・大藤桂子とは、ピアノの音色だけでシンプルなアンサンブルを聴かせた。
ラブ・ソングをテーマにつながった7人の演奏は、会場に集まったひとりひとりをつなぎ、大きな輪となった。(文・編集部) (月刊エレクトーンより)
Photo by 田中大造