エレクトーンコンサート
2001.3.31
愛、それはさまざまに変化しひとつの想いへと変わる
耳を澄ませば、かすかに波の音が聞こえてきた。舞台の光が、夜明けの海のように波打っている。この波は私たちをどこへ連れて行ってくれるのだろう。
7人のプレイヤーによる"Love Song"の競演。囁くように始まった1曲目は、映画「海の上のピアニスト」より。船の中で生まれ、生涯地上に降りることのなかった主人公が、いろいろな人から受けた深く大きな愛を、加曽利康之が、海を泳ぐようにしなやかに紡ぎ出す。続いて冴咲賢一が加わり、甘いバラードをうっとりと聴かせる。昔の苦い恋も時間が経つと、思い出に昇華できる、そんな愛の形。そして、冴咲のオリジナル「SEE U」は、"じゃあね!"とカラッと明るい別れの曲。
尾野カオルは、まず「SENSITIVITY」をソロで。20歳の頃にちょっと背伸びをして作り、10年経った今、ようやく思うように奏でられるようになったという大切な曲。渋いバラードで、呼吸するように思いの丈をぶつける。そして、じっくり聴かせたところで、グルーヴィーなリズムが響く。ここで尾野が窪田宏を呼び込んでのデュオ「IT'S TOO LATE」。窪田のオルガン、尾野のサックスが熱く絡み合う。初顔合わせとは思えない、絶妙なかけ合い。クールで乾いたサウンドで会場を包んでいく。
打って変わって、ソロでの窪田は「ワインと花束を買って」。いつものダンサブルな窪田のイメージとは違って、メロディーの美しいバラード。君の幸せを願ってお互い努力していこう、という優しい愛の歌。
再び波の音が聞こえてくる。その波に誘われて、中村幸代が静かにやってきた。朝の目覚めのように明るくさわやかな曲を、幸せそうに演奏する中村。曲を作ること、演奏をすることに、少しの力みも感じさせない、その穏やかさが心にしみる。まるで、彼女の上には、いつも澄み切った真っ青な空が広がっているような、まっすぐで偽りのないメッセージ。そして、平和への願いを込めて「WISH」。その姿は愛にあふれ、神々しい。
ピンクのドレスで登場の岩内の1曲目は、どこか寂しさと切なさを感じる「桜月夜」。満開のしだれ桜が涙を流すように、ハラハラと舞い落ちる様子に心を打たれて作った作品。舞台の上にも桜吹雪が降り、咲いては散っていく花びらの無常観、そして自然への愛で胸いっぱいに感じられる。自然は偉大で温かく、常に感謝して地球上の命をずっと愛していきたい、そんな想いを伝える「MOTHER TREE」「セレナーデ」。壮大な地球を感じさせるシンフォニックなサウンドは、辺り一面に広がって心を潤す。
7人7様のコンサートを締めくくるのは、松田昌。生を終えた者への伝えきれない想いを風に託して、と作った「風よつたえて」。「こんなに伝えたいことがあるのに、なぜあなたはそこにいないの?」という叫びを、チェロのもの悲しい音色が伝えていく。そして、阪神大震災での人々の助け合う姿、人間に対する信頼に感動して生まれた「春待人」。家も人も失った寒い季節に。春を待ち焦がれる人々の、希望への明かりとなるような調べに、心の奥底が温かくなる。
さまざまな愛の形を最後に伝えるのは、松田と岩内の「ノエル」。早くおウチに帰ろう、そんな気分になった。
言葉では言い表せない想いを音に乗せて届けた、「Love Songs~愛の輪をつなげ」。プログラムにある一文が、今日の皆の想いに違いない。
「世界が永遠に平和でありますように」(文・松内愛) (月刊エレクトーンより)